そのPDCAをいますぐやめろ

PDCAが時代遅れだとか、OODAにすべきだとか、そういうよくあるPDCA批判ではなくて、もっと低レベルな話。

PDCAでググると、いきなり:

  • PDCAはウィリアム・エドワーズ・デミング(以下デミング)が提唱した
  • PDCAは日本独自のものでデミングが提唱したのはPDSAである

という矛盾した記述に出くわす。

詳細は省くけれど、デミングの講義(講演)内容を日本国内に紹介する際、翻訳と改変を同時進行で出してしまったのが混乱の原因ではないかと。そこに出てくるデミング・ホイールに含まれる要素を、Plan, Do, Check, Action(※)と対比というか置き換えてPDCAとしてしまったらしい。元の内容の紹介と改変したものを(責任も含めて)明確に切り分けて出すべきだと思うんだけど、まあ70年も前の話だから仕方がない。(改変部分の発案は誰のものか不明らしい。)

※ Plan(動詞), Do(動詞), Check(動詞), Action(名詞)は、何か恥ずかしいのでやめた方がいいと思うんだよね。この日本発のが英訳されたものはAct(動詞)に直されているけれど。

しかし、問題にしたいのはそこではなくて、身近にもよくある「PDCAをやれ」みたいな話が降ってくるやつです。

やれと言ってる人も、やらされてる人も「PDCAって計画して実行して評価して見直して次の計画を立てるアレですよね」みたいな理解で、それ自体は間違いじゃないかもしれないけれど、それでわかったつもりになってるのが大変ヤバいです。

そんなペラいものだったら、わざわざ「学者(デミング)が提唱した」とか言わないでしょう。やれと言うなら、(怪しいビジネス書やググって出てくるブログの知識じゃなくて)一通りちゃんとした書籍に目を通して欲しいですよね。どういう思想なのかとか、そもそも品質管理の話なんだよとか。

でも大抵は調べもせずにやるので、謎の我流PDCAが編み出されるわけです。我流というと何かカッコいいので捏造PDCAとでも呼びましょうか。この記事のタイトルの「そのPDCA」はこのPDCAです。

初手でいきなり「数値目標」とか言ってきたら完全に捏造のやつです。何の根拠もない「前年比10%向上」とかですね。これをやると、「P:数値目標を立てる」「D:頑張る」「C:数値目標を達成したか確認」「A:達成できなかったので反省」みたいな、科学的手法とは正反対の謎ツールになり果てるわけです。いやまあ、ちゃんとデータを分析して「ここがボトルネックで、他の状況と比較すると、これだけ投資して改善すればこれだけ数値が向上するはず」みたいな根拠がありゃいいんですがね。予算減ってるのに何故向上するんですか?

こんなことをやってるうちは、PDCAを別のモノに置き換えたところで、別の言葉遊びが始まるだけですよね。PDCAと呼んでいるのがデミング・ホイールなのか(日本で改変された)PDCAなのか、なんてのは些末?な話です。

ちゃんとマネジメントやってる人からすると「さすがにそこまでひどいのはないだろう」と思われるかもしれないけれど、結構あるんですよね。お役所文書にもよくPDCA出てくるけれど、謎の我流PDCAになってることが多いです。ひどいのになると、Pで作った計画とCで評価してるものが無関係だったりとか。